短いけれど永遠の時間


#14へ続く
大人の猫の魅力

はんぞうさんは、とても賢くフレンドリーな性格の猫でした。
人との付き合い方を心得ているので、噛んだり引っ掻いたり、粗相をしたりといった行動で、
わたしを困らせるようなことは一度もありませんでした。
寝る時は、なんの躊躇もなく私の枕元で寝ていましたし、
ご飯の時には、おどろくほどしっかりとした発音で「ゴハーン」と鳴いて催促してきました。
おそらく、前の飼い主さんと暮らす中で覚えたのでしょう。
トイレや爪を研いではいけない場所など、基本的なしつけも完璧になされていました。
日中家を留守にすることの多いわたしにとっては、目が離せない子猫よりずっと飼いやすいうえに、
こちらの生活に勝手にすんなりと溶け込んでくれるという、まさに理想的な猫でした。
シェルターなどで、里親さんを待っている大人の猫ちゃんはたくさんいます。
お仕事のご都合などで家を空ける時間の長い方にこそ、
大人の猫ちゃんの方が断然飼いやすいですよ〜! とお伝えしたいです。
でも、飼いやすさはその子の性格にもよると思いますし‥、かわいい子猫を飼いたいというお気持ちも、よーくわかります‥。
本当の飼い主さんの存在
理想的な猫だと思えば思うほど、
そんな飼い猫が行方不明になってしまった飼い主さんの心情を想像すると、1日も早く元のお家に返さねばという焦りに駆り立てられました。
近所にある動物病院に迷い猫の問い合わせがないかを確認したり、迷い猫の情報を集めたりと、微力ながらも飼い主さんを探そうとしていました。
その中で思いついたのが、「猫を連れて散歩」でした。
はんぞうさんも勝手知ったるご近所といった様子でどんどん歩いていくので、本当にお家を見つけることができるのでは?と密かに期待していました。
散歩のついでに、電柱などに「猫探してます」というポスターが貼られていないかを、確認する目的もありました。

しばらくたっても、
一向に進展のない飼い主さん探しに、わたしは次のように考えるようになりました。
・引っ越し先ではペットが飼えないので、猫を置いていった。
・飼い主さんが急逝し、残された猫。
住んでいた地域が高齢世帯の多い地域でしたし、当時は東日本大震災後で、家に取り残されてしまったペットの問題も取りざたされていたため、様々な事情があるのかもしれないと考えました。
そして、はんぞうさんに対して、離れたくないという執着が生まれていたことも否定できません。
伴うリスク
飼いやすくもある大人の猫ですが、外に一定期間いた猫ちゃんは何かしらの病気にかかっている可能性も高くなってしまいます。
具体的には、猫から猫へ感染する猫風邪や、猫同士の喧嘩でできた傷や母猫から子猫に感染してしまう猫エイズなど、比較的治りやすいものから、一生の付き合いになる病気まであります。
わたしはこの時初めて、大人の猫が歯周病になりやすいということを知りました。
歯周病(歯肉炎・歯周炎) <猫>
概要 Overview
歯肉の炎症を歯肉炎といい、歯肉の下の歯を支える歯周組織の炎症を歯周炎といいます。この2つを合わせた病名の総称を歯周病と呼びます。ワンちゃん、ネコちゃんの口の病気でもっとも多いのが歯周病です。また、発症率は年齢とともに増加します(アニコムデータラボ調べ 2007.4.20)。
出典:みんなのどうぶつ病気大百科
はんぞうさんは、歯肉炎で歯(歯茎)が痛むため、ご飯が食べられなくなっていきました。
10歳オーバーの高齢猫のはんぞうさんにとって、外で過ごした期間は、その後の身体の負担になっていったのかもしれません。
はんぞうさんの痛みを取り除くのと同時に、衰弱を食い止めるための試行錯誤の毎日が、何ヶ月も続きました。
動物病院に通い続け、治療の他にもいろいろとアドバイスをいただいたり、
同じく歯肉炎で闘病している猫ちゃんの飼い主さんのブログを拝見して参考にさせていただいたり、
少しでも食べられるものはないか探したり、
仕事時間以外のすべてを費やして、
あらゆる事をやりつくしました。

明らかに猫の方が高いものを食べていました‥栄養価も値段も。
猫のため、自分のため、飼い主さんのために。
苦しむはんぞうちゃんのために、というのはもちろんなのですが、
闘病生活を支えていたのは、
自分が後で後悔しないために、
さらに、
この子を待っている飼い主さんのために、
というおもいでした。
諦めたり、できる事をしなかったりしてしまうと、
後々、必ず後悔し、それこそペットロスから立ち直れなってしまうことを一番に恐れていたのです。
そうならないためにも、「あの時できる全てをやった」と胸を張って言えるように、やりきる必要がありました。
こういった考え方は、ペットロスを乗り越える一つの手がかりになっていきます。
戻ってこない時間に感謝
わたしの心に、思いっきり爪痕を残し、はんぞうさんは旅立ちました。
残されたわたしは、当然のようにペットロスになってしまいましたが、自分にはあれ以上のことはできなかったと思うことができたので、比較的早い段階で自分を立て直すことができました。
振り返ると、一緒に生活した時間の半分くらいは何かしらの身体の不調で、はんぞうさんを病院に連れて行った計算になります。
しかし、1年半という短いながらも、凝縮した楽しさがありましたし、保護すると決断した事を後悔したことはありません。
むしろ、「最後までお世話をさせてくれて、ありがとう!」という感謝の気持ちが今も続いています。
なにしろ、猫を飼うこと自体を諦めていたわたしを、猫と過ごすことのできる生活に導いてくれたのははんぞうさんでしたので。
そして、次のステップへ踏み出すきっかけを作ってくれたのも、はんぞうさんでした。
以上、
「#13 大人の猫を迎え入れるということ」でした。
おそまつさまでした。
お付き合いいただきありがとうございます!
#14 へ続きます!
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#12 飼い猫がしてほしいコト
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